海賊王を目指すくらいのつもりで行け。

level.43


「母さん、オイラ。海賊王になるよ！」

とでも言っているくらい、元気に育って欲しいのですけど、中々成長が見られない…。

結構前に我が家にやってきて、日のあたるベランダに放置（え！？）してんですけど、予想ではもうまもなく子離れ親離れをするかの～と思っていたのに、思い切りオンブに抱っこなんですけど～。

ま、ノンビリでかくなれ。


こんばんわ、スナです。蒸し暑いですね～。ウチワが欲しいなと思っていたら、今日、帰りがけの道で通りすがりにゲットしますた。

求人情報誌の広告うちわだったんですけど、思い切り扇ぎながら電車、待ってますた。

もっと良い条件で内容も気も楽な仕事ないかな～と思いながら扇いでますた…。

銭湯の番台とかやってみたいんですけどどうかな（決してイヤラシイ思いで言っているのではない、でかい風呂に入ってそしていちご牛乳を飲みたいから。別の意味でいやらしいってか、いやしい）


あ、今度の休みは近くのスーパー銭湯にでも行こうっと。つうか温泉入りたい。


あ、もうスグ母さんの誕生日だ。温泉のモトでも贈ろうかと一瞬思ったけど、あっちは本場モノだたＹＯ！


つうか。
父の日、忘れてたー！

ま、いいか。

※第二幕開幕。このまま自然消滅しちまおうと思っていた計画を見透かされてしまいますた…。
しばらくはココ、コレが続くと思いますのでこの「pokračování（チェコ語で続きを書くと言う意味ですコレ）」が出ていてもクリックしないでください。
ガッカリイリュージョンを味わうことになりますんで。ご注意！


体が不意にガクンと大きく揺れてハッと眼を見開く。電車の手すりにぶら下がるように掴まったまま、ウトウトしてしまったようだ。実際はそんなに体は動いてはいないのだけど、俺の慌てた気配に真ん前に座っていた男がチラリ、目線を寄越す。俺は気まずい気持ちで軽くお辞儀をした。神経質そうな眼鏡を軽くクイっと上げると男は読んでいた本に視線を戻す。

何だよ、気分悪いな。俺は一瞬ムッとしたが、気を取り直して電車のガラスをボンヤリと見た。着ているスーツも何だかくたびれたボロボロの姿の自分が暗い窓に反射して映っている。格好悪いな、俺。素直にそう思った。

あの強烈なインパクトを与えてくれた飲食店にはここ暫く行っていない。突如大きな仕事が舞い込み、それに追われる日々が続いていた。入社して４年目。自分にとってもチャンスだ。これがうまく行けばまた本社に戻れるかも知れないし、あわよくば出世のチャンスでもある。しかし…
「俺、出世したいのかな…」
ふとそんな事も思う。別に今の仕事は嫌いではないし、他にやりたいこともないのだが、がっついてドンドンのめり込みたいってこともない。ただちゃんとやらないとって思う。ちゃんと？何をちゃんとやるって言うんだ？

「まもなく駅に到着します。お降りの方は…」
アナウンスが聞こえ、俺はハッとまた我に返る。降りる駅だ。そう言えば晩飯も食っていない。あの店に寄れば良かったかなと思いつつ、最近はその大きな仕事のためにデザイン事務所や広告会社での打ち合わせで外を飛び回ることが多い為、今日も別の駅から乗った。そんなことも重なって店に行けていないのだが、久々あの「気まぐれ」が食べたいとも思う。何が出てくるのか分からない飲食店。そこに集まる一癖も二癖もあるヘンな客。若者の癖に無愛想なウェイター。そう言えば…まだあの店の店主を見たことがないな。どんな人なんだろう。どうせ変わり者だろうけど。

電車が減速し、人々が降りる為動き出す。俺の前に座っていたいけ好かないインテリ風の男も本をパタンと閉じると立ち上がった。その時、駅のホームに入るために線を切り替えたこの電車が大きく揺れ、男がバランスを崩して俺にぶつかり、その拍子に抱えていた本もバサリと落とした。
「失礼」
誤り方もいけ好かないな。一瞬そんなことを思いつつ、ま、こんな男も世の中にはいるから世界は回っているんだ。お、何か俺今、格好良くね？みたいなことを心で呟く。ホント、侘しいな…。
インテリ男が本を拾い上げた時にヒラリと一枚の白い紙切れが俺のすぐ傍に落ちた。反射的に拾ってやるとそれは名刺で、しかも見覚えのあるものだったので一瞬自分の名刺かと思ったが、なんとそれはあのモジャの名刺だったのだ。

「え？」
思わず口に出した俺に怪訝そうな顔でインテリ眼鏡は見ている。俺はアタフタとどうするか迷ったが、
「あ、あの…失礼ですがこの名刺の方とお知り合いなんですか？あ、あの俺もこの方に会ったことがあって…でも１度会っただけなんですけどでもあの、まさかこんなところでその…」
男はすっと眉を上げる。
「私も今日、偶然立ち寄った店で偶然出会っただけです。店を出る間際に突如渡されたので持っていた本に無意識に挟んでしまっておりました。私にとっては知らない方なのでお知り合いの貴方にどうぞと言いたいところですが、それでは私のプライドに関わるので返して頂いても宜しいでしょうか？」
何だか理屈っぽい言い回しで良く飲み込めなかったけど何となくムカつく。こんな男に素直に返すのもモジャが可哀相だと何故か思いつつも、元々はモジャがあげたんだってか、何だよあの男。あの店に来るヤツラみんなに配ってんのかよ！？
そうこうやっているうちに電車は止まる。入り口付近が自然と混雑していた。
「あの…。私この駅で降りるので早く返して頂けませんかね？」
「あ、はい。す、すみません…」
結局俺は慌てて名刺を返した。男はいつの間にか取り出していた名刺ケースに機械的に収めるとこれまた機械的にケースを仕舞い、眼鏡を持ち上げた。
「今度の金曜夜、この方のパーティーをすると自分で仰ってましたよ。何でもまた来週から海外に行かれるそうで。もしお知り合いならお店に行かれてはいかがですか？」
「はぁ…」
ドアが開き、どっと人が雪崩れるように降りてゆく。それではとインテリは言うとその中に紛れ込んで行った。つうか、俺も降りるんだよ、此処で。俺は慌ててその雪崩れにくっ付いて行った。

モジャの心理が分からない。
コンビニで弁当を買い、トボトボと家までの道を歩きながらボンヤリ思う。本当は…あの時ちょっと嬉しかったんだ。あんなにアヤシイ男でも、こんな自分に声をかけてくれて…。それなのに。
最初はショックでションボリしていたけど、考えれば考えるほど段々腹立たしくなってきた。
そうだ、あのヌイグルミのことだってある。１回ガツンと言ってやらないと気が収まらない。
金曜の夜…か。待っていろよモジャ公。