2008'06.23.Mon
level.43
明日は外国人さんと話をしないとならんので会社に行くのが心なし…気が重いです。ふぅ。
日本語で会話が条件ですけど、日本語も英語もままならない私には気が重いです。ふぅ…。
ベラベラ日本語上手な方で「あんたそれでも日本人?」とか言われたらどうしようってな…ね。ふぅ。
つうか関西弁でノリツッコミされても困るなあ。関西弁コワイー。
生まれは兵庫、今は大阪。関西で生活するのが当たり前ですって言う知り合いが1人だけいるのですけど、ソイツに何気に関西弁ニガテ~と言ったらば、ものっそ怒られますた。
ま…確かにソイツから私の方言、否定されたら怒るかも。つうか、良さをアピールするよ。ニガテ意識を取り除いてやる努力をするよ!?
それなのに「アホちゃう?」とか呆れた声で言われたらこっちも怒るYO!
「関西弁が標準語だと思うな!バカヤロー!」と言って電話を切ってやりますた…。(ちゃんとその後、フォローの電話がかかってきて私も謝りますたよ)
とまぁ。
この狭苦しい島国NIPPONでも方言で小競り合いが起こっちゃうのに、どこの生まれかも分からない外国人さんとガチンコなんて…ふぅ。
や~だな~。や~だな~。
とクルクル回っていたら、思い切り足の小指をテーブルにぶつけますた…。
ふぅ。ねま。
※あ~。人の心情のゴチャゴチャ表現するっての難しい~。
数席しかない使い込んで古ぼけた小さなテーブルを、ガタガタ言わせながらくっ付き合わせ、その上に真っ白なテーブルクロスを勢い良く広げながら店長は言う。
「タロちゃん、悪いけど手伝ってくれない?」
ぼんやり見ていた俺はその呼びかけに反射的にテーブルクロスの端を掴むと引っ張った。つうか、何度もくどいが俺はタローでもタロでもねぇ。でもま…良いか。俺は諦め全てを受け入れる方向で考えることにした。こいつらに何を言っても俺の言葉は通じない。
クロスを整え、散らばった椅子を適当に揃える。そうこう席を整えている俺の傍にダラダラと言葉の通じない生物共が集まってくる。
「あの…。お勘定を」
皿やらフォークやらをテキパキセッティングしていた店長にインテリメガネが声を掛けるが、
「はいはい、メガネさんも座って頂戴。あ、甘いものは大丈夫?」
己の気まぐれでしか食事を出さないくせに、嗜好を律儀に聞いて来るその矛盾した返答に、インテリメガネはちょっと戸惑っている。
「あ、いや。私はただ食事をしに来ただけで…」
押され気味のメガネをチラリと見ながら俺は内心舌を出していた。いい気味だ。無理矢理椅子の1つに座らされ、店長がダメならとキシザワと並んで歩いてきたハルタに声を掛けようとしたインテリメガネの前にドカっとモジャが座る。
「良く来てくれたな、メガネさんよ~。ワシのこと、思い出してくれたかや~?」ニコニコ笑いながら馴れ馴れしくモジャが話しかけている。そのモジャの様子を見て俺は「ん?」と気になりセッティングの手を止めた。しかしインテリメガネは困った様子でしきりにその神経質そうなメガネを持ち上げていた。
「ふぁ~あ、おい、ケーキは何処だよ?俺の好きなイチゴの生クリームケーキはよ!?」
大あくびをしながら俺のすぐ隣の椅子にダラリ腰掛けたキシザワに俺は我に返る。
「何、威張ってんの!?そんなに言うならアンタも手伝いな!」
相変わらずテキパキと支度をしている店長がキシザワの目の前にグラスの乗ったトレーを置く。配って!ビシッとそれだけ言うとサッサとキッチンへ戻っていく。このキシザワすらこの若い女店長には敵わないらしい…。
「バーカ」
続けてワインボトルやらガラスピッチャーに入ったレモン水やらをドカドカ置きながらハルタが呟く。それを聞いたキシザワは咄嗟にハルタへ蹴りを入れようとしたが、ヒラリと体を捻らせ攻撃をかわしたハルタはニヤリと笑う。ガタリと椅子から立ち上がったキシザワを見てハルタは足早にキッチンへ…まるで子供のケンカだ。
「コラ!遊んでんじゃないよ!」
メインの大きなケーキを抱えて出てきた店長が怒鳴る。一体コレは何なんだ…?この店で起こることはもう全て受け止め流そうと決めたばかりなのに、俺はため息を付きながら椅子にグッタリと座った。
「それでは…。モジャの旅の成功を祈って。そして無事にまた再会出来ることを願って…。いっただっきまーす!」
店長が元気に叫ぶと皆、一斉にケーキやら飲み物やらに有り付く。普通、ここは「乾杯」じゃねーの?そんなことを思いつつ、ハルタが取り分けてくれているケーキ皿をキシザワから受け取る。クリームが流れ落ちそうなくらいコッテリしたその外見とは裏腹に、意外とさっぱりしていて美味しかった。
「どう?タロちゃん」
俺の左側に座っている店長が聞いて来た。美味しいですと素直に答えれば、良かったと素直に返ってきた。
「本当はチョコデコレーションにしたかったんだけど、そこのキッシーが異常なくらい生クリームが好きだからさ、仕方なく要望に応えてあげたワケ。モジャが主役なんだけど、アイツは何でも食べるから。モジャがチョコって言ってくれさえすればキッシーの要望なんて即却下出来たのにさ。屈辱だよマジで」
「うっせーな。まるで俺が我侭言って仕方なく付き合っているみたいな言い方するなよな」
俺の右隣に座っているキシザワが俺の代わりに即答する。
「事実そうだろう?教師の癖にガキみたいな我侭言うなよな」
今度はハルタがすかさずボソリと呟く。俺はフォークをくわえたまま3人のやり取りを呆然と見ていた。俺の前ではモジャが大声で笑い、その隣でインテリメガネが淡々とワインを飲んでいる。
何なんだ、コレは。来週から南米に発つモジャの送別会なんじゃないのか?それなのに誰一人、そのことに触れないのは何故だ?!
「タロちゃん、彼女いるの?」
ぼんやりそんなことを考えていた時、店長の声が聞こえ俺は反射的に彼女を見た。
「え、あ、いや…。今はいません」
「今は…ね。あ、もしかして既婚者とか!?」
まさかそう来るとは思わなかったので俺は慌てた。
「い、いえ。独身ですよ」
あははーと頭を掻く。ふうんと店長は相槌を打ち、んじゃあ、どんな人がタイプ?とニヤニヤしながら続ける。本気で面白がってんな、コイツ…。
「あ、あの。俺のことなんかよりもコレってモジャさんの送別会なんでしょ?もっとこう、モジャさんの話とか…」
俺の言葉に今気づいたと言わんばかりの表情で店長は、あぁ…とマヌケな相槌を打った。
「モジャ、アンタの話を聞きたいってよ、タロちゃんが」
インテリメガネに絡んでいたかと思えば、ハルタの頭をグリグリ撫でていたモジャがこっちを見た。
「おお、タロちゃん~。ワシに興味があるとね~。何ね?」
「あ、あの~。モジャさんはお仕事で南米に行かれるんですか?」
「ま、そうじゃけど~。仕事の話なんて今はせんで良いじゃろ?あ、ハルタ。N●Kの『趣味の盆栽』ちゃんとDVDに録画するの忘れなよ~」
そう言うとまた笑いながらハルタの頭を撫でている。
「ごめんね」
何故か店長がボソリと俺に謝る。理由を聞こうとしたが、
「そうだ、皆でトランプでもしない?」
店長はパンと両手のひらを叩き、既にもうトランプを取りに席を立っている。その後、何処から持ってきたのか、皆でババ抜きやら大富豪やらをやり、お開きになった。
「んじゃあな~!」
モジャが大きく手を振りながら言い、皆もそれぞれ自分の帰る場所へと歩き出す。まるで…明日も極当たり前に会うかのような呆気ない別れだ。ちょっと拍子抜けしながらもヤレヤレと自分も一歩、駅へと歩き出そうとしたその時、
「タロちゃん」
振り向くと店長が俺を見上げてニッコリ笑っていた。こうして向き合ってみるとこの店長は小さく華奢で、その辺りを歩いている普通の若い女性と変わりなかった。今更何故、そんなことを思ったのか…。ああ、そうか。ついさっきまで高校生のハルタも含め、大の男5人と同等に騒いでいたのだ。男とか女とか…職業とか肩書きとか、歳とか名前とか…そんなこと一切考えず俺たちはついさっきまでただ「騒いで」いた。
「今日はありがとう。凄く楽しかった。モジャもちゃんとホテルに戻って行ってるし、あの調子なら今度もちゃんと仕事、成功してそしてまた店にやってくるわ」
俺は店長と一緒にモジャの後姿を見た。大きな背中をしゃんと伸ばして歩いている。さっきまであんなに酔っていたくせに…。
「この店はね…現実に疲れた人が、リセットして~、自分を取り戻して~。そしてまた、それぞれの現実で頑張れますようにって言う思いでやってるの」
店長の思わぬ発言に、視線をモジャの後姿から彼女に戻す。驚いた顔でもしていたのだろう、店長はニッと笑った。
「ま、別に店側のそんな勝手なコンセプトを客に話すことなんてバカなこと普通はしないし、ただお客さんが楽しんでくれればそれで良いんだけど、タロちゃんには知って欲しくてね」
「何でですか?」
「モジャが連れてきたお客さんだから。あの男、モジャモジャ爆発してるけどああ見えて中身は物凄くキレるのよ」
「連れて来られたってか俺、モジャさんとお会いするの今日で2回目だったんですけど…それに名刺頂いただけで彼のこと何も知らないし、モジャさんも俺のことなんて何も…」
「無理してるでしょ、タロちゃん」
ずばりそう言われて俺は言葉に詰まる。無理?俺が何を無理してるって言うんだ?!
「モジャは暫く…そうね、半年は現れないだろうけど、キッシーもインテリメガネもそしてうちのハルタも貴方に好感を持っている。友達になってあげて…ね!?」
バシッと肩を叩かれ俺は前につんのめった。
「あ、あの…」
「おい、いつまでさぼってんだよ!早く片付け手伝え!!」
ハルタの怒鳴り声が聞こえ店長はゲンナリした表情をし、肩を落とした。
「んじゃあ、タロちゃんも気をつけて帰ってね。また遊びに来てね~」
トボトボと店内に戻っていくその後姿は、本当に此処のオーナーなのか?と疑ってしまうもので少々不安になったが、クルリ踵を返すと俺は今度こそ、駅に向かって踏み出した。
お互いの。
本名も素性も事情も…何一つ知らない。だけど何故か凄く凄く楽しい時間だったのは事実だ。
「ハジメマシテ」
そう言って名刺交換をしない限り相手との距離を縮める一歩を踏み出すことが出来ない。いつの間にかそんなマニュアルが俺の中で確立していた。確かにそれは間違ってはいない。社会人としての常識的ルールだ。社会人としてでなくて友人同士でも、「名前は?」「仕事は?」「歳は?」「何処に住んでんの?」「家族は?」そんなまるで…よくよく考えれば極端な話、取調べのような言葉をキッカケとして使っていた。それも間違ってはいない。相手を知るための、そしてこれからその人と接する上での貴重なデータだ。
でも今日。
何もデータがないヤツラとテーブルを付き合わせ、同じケーキを食い、そしてトランプなんぞ古典的な遊びをし、そしてそれが凄く楽しかった。俺はハッとして足を止める。
「こんなに素直に笑ったのは…いつ振りだ?」
思わず口に左手を当てる。俺の両脇を駅のホームに向かうための人々が次々と足早に通り抜けてゆく。まるで…機械仕掛けの人形のようだとぼんやりそれらを見ていた。俺も、コイツラと同じだ。毎朝同じ時刻の同じ電車の同じ車両に乗り、そして同じ駅で降り同じ道を歩いて会社に吸い込まれる。それの繰り返し。毎日、同じ繰り返し。
そんなもんだろう、人生なんて。不満がなけりゃ、満足もない。それ以上のことは考えない、期待しない。それで良いと思っていた。
「無理してるでしょ、タロちゃん」
無理なんかじゃない、これは。みんな同じなんだ、これは。
…なのに、この吐き気はなんだ!?
頭がグルグルして…あ、倒れるかも。呑み過ぎたか?と思ったとき
「おい。チンタラするな。終電に乗り遅れるぞ」
ハッと顔を上げると、インテリメガネが目の前でクイとそのインテリメガネを持ち上げていた。
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