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cesta 07

かいしんのいちげき

2017'12.17.Sun
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2007'08.27.Mon
level.1

メガネを作りに行った。

街中まで買いに行くのは面倒だったので、近所の駅前にある、ひっそりとした眼鏡屋に行った。前から気になっていたけど、実際に入ったのは初めてだった。

勿論、客なんて独りもいなくて。元々、客が滅多に来ないのを見通してか、私がドアを開け、中に入るとチャイムが鳴って1人のオバサンがノッソリと出てきた。

「好きにかけて良いですよ」
そう言われて好き勝手にやっている間に、オバサンはかけていた私の家用の古いメガネを整備(?)してくれた。
ついつい…かけたまま寝てしまうので、セルフレームのくせにメガネは少し曲がってしまっていた。

「何年、使っている?」
そう聞かれたけど…もう、思い出せないくらい。

「はい。これで少しは良くなったはずよ」
確かに。レンズは綺麗に磨かれてクリアだし、前よりずっと掛けやすくなっていた。

「そういうセルフレームの方が好き?そう…。お客さん、ちょっと個性が強いから、こういうのが似合うと思いますよ?」
ドンドン渡されては鏡の真ん前で掛ける。
先ほどまで1人でフレームを選んでいたのより、随分と自分に合っているフレームばかりで、流石プロだなあと思った。

メガネを選ぶのが凄くニガテ。ネクタイを選ぶのと同じような感じだ。手に取った時点では良いと思っても、実際合わせてみると何だかチグハグで、結局、どれが良いのか分からなくなってしまう。

つうか。
「個性的」って…。フツーの小汚い格好してるだけなんですけど…。

どれもこれも良かったけど…。どれもこれも今ひとつで、私の反応は薄かった。

そうやって何本も一緒に見ながら、接客のプロは、私のことを少しずつ聞き出してゆく。それによってまたこの客にあったメガネを選んでやろうと言う事だろうけど、

「もうスグ海外に行くんです。だからやっぱり強度に不安のある細いメタルより、何だか強そうな全部セルのフレームが欲しいなあと…。まあ、色が鮮やかなのが多いからセルの方が好きなのもありますけど…」

そんなことをボソボソ言う私に、オバサンの態度が変わった。

「え!?いつから!?どこに!?」

「え…。ヨーロッパ…」

「そう…っ!私もね、昔、全日空に勤めていて、色んな所を回ったのよ~」

へえ~それは驚き。

「ヨーロッパか…。全日空時代でも、このメガネ屋になって買い付けでも、フランスとか、結構回ったけど…ドイツ行った事がないのよね。凄く行きたいんだけど…」

「ドイツ、行きますよ?」

「そうなの!?私の友人がベルリンが良いって言ってた。旧東ドイツと西ドイツの境目が良いって…」

「あ…。まさにそこに行くんですけど…」

「まぁ…っ」

何だか…。メガネがどうのこうのよりも、こっちの話の方が大変重要になってきた。
相変わらず客は1人も来ない。

「友達と一緒?ツアー?」

「…いえ。独りで。ツアーではなくて、ホテルやユースに泊まりながら東ヨーロッパを転々と…」

「まぁ…!」
オバサンは手を叩いて驚いていた。

「旅は良いわよ。特に海外は良いわよ。外に飛び出した分、絶対、物事の考え方とか見方とか…そういうのが変わるし、人間も深くなる」

まぁ…。そうして昔を懐かしみながら話しつつも、オバサンは「はい」と私にフレームを渡す。
オバサンの話をもっと聞きたかったし、何より人とのコミュニケーションを取るのがニガテの私には、オバサンとの会話の方にほぼ100%、気を集中していたので、殆ど自動的にその渡されたフレームをかけていた。

が、
「あ、これ…。良いですね」

鏡に映った自分を見て、凄くピンと来た。瞬時にメガネ選びモードに変わる。オバサンもプロのメガネ屋に戻る。

「これね、○○って言うブランドで、最近1本だけ入れて見たのよ~。黒のセルフレームだから重たくて妙に存在感がありそうだけど、ほら、裏側がね、赤で可愛いでしょ?」

「おいくらですか…?」

私の遠慮がちに言う声に、オバサンも少し眉をひそめながら、
「少し値が張るのよ…」

でも。
そのメガネをかけた後に、試しに安いフレームを掛けたけど、全然違う。

どうせなら…。折角買うのなら、ちゃんとしたものが良い。
それに。
インスピレーションで物事を決める私のその「勘」に、そのフレームはピッタリと合って、もうそれしか見えなくなってしまった。

「…旅行に行くのよね~」

躊躇いつつも、何度もそれを掛けている私を見ながら、オバサンは考え込んでいたけど…

「特別価格にしてあげる!」

なんとレンズ代を受け取らなかったのだ。フレーム代だけ。しかも…意外に度数のある私は、1番安いレンズだと思い切りフレームからはみ出してしまうから、もうランク上のレンズにしてくれた。

「これも付けちゃう!」
そう言って、メガネチェーンまでくれた。

「これ、結構便利よ。両手使えるし、いちいちガサゴソとケースを探さなくて良いし」

いや、もう…。十分ですから。そう言いながらも、オバサンは強引に私を座らせ、チャッチャと度数を計り、伝票を書き込んでゆく。

「うちはレンズを専門の加工会社に出しているから、出来上がりにちょっと時間、貰ってるの。間に合うかしら?」
あくまでも私の都合に無理に合わせてくれた。

「ドイツは精巧でマジメだから、日本人の気質と良く合うと聞いたわ。そうだ、あっちでもフレームとか買ってきなさいよ。レンズはこっちで入れてあげるから。カラーとかにしてサングラスとかも良いじゃない!?」
恐縮している私とは裏腹に、オバサンのテンションは上がる。まるで自分がドイツに買い付けに行くみたいだ。


「良い旅を!Bon Voyage!」
料金を払い、引き換え伝票を受け取って出て行こうとした私に、ドアを開けてくれながらオバサンは言った。

「ありがとうございます。戻ってきたら…ドイツのフレーム、持ってきますから見てやってくださいね」

「もちろん!ありがとうございました」


メガネを作りに行っただけなのに…。
何だか凄く、私の心はウキウキしていた。

気に入ったフレームに出会えただけではなくて、それ以上に、素敵な出会いがあったから。

もう…。
何十年も昔の、自分のフランスの旅を楽しそうに、懐かしそうに話してくれたオバサンの、まるで若い娘のような笑顔がとても印象的だった。

申し訳ないがフランスには…興味はないので話の内容にはちっともついていけなかったので、ただ相槌を打ったり、頷いたりするくらいしか出来なかった私に、まるで自分の娘に話すように語ってくれたメガネ屋のオバサン。

街中の…。
毎日何百人も訪れる街中のメガネ屋では…。

まるでメガネ製造機のようにクルクル動く従業員たち。無駄な話をしなくて良いので、人と関わることが…まして初対面の人と話をするなんて本当にニガテの私には、とても気が楽だ。

目的のメガネさえ手に入れば問題ない。

大量生産するから安いし、まさに使い捨てだ。

ぶっちゃけ。
今回、そんな「使い捨てメガネ」で良かった。もしかしたら…移動の多い旅先で壊してしまうかも知れないから。

でも…。
「もうこれが精一杯。随分と使い込んでいるのね~。メガネも満足していると思うわよ~」

私のボロい、家用メガネを渡してくれながらオバサンはそう言った。
恥ずかしながらも、でも嬉しかったし、何だかちょっと誇りに思った。

やっぱり…。私の「モノ」に対する接し方は、こうでなくちゃ!と思った。「使い捨て」なんて有り得ない。

駅前から少し外れた小さなメガネ屋。客なんて滅多に来なくて、だから普段は店のカウンターにすら座らず、奥に引っ込んで…。

でも…やる気がないワケではない。
売っているアイテムを見る目は、確かで。

そして。
客を見る目も確かで。瞬時にその人、その人に合ったモノをセレクトして。

何気ない話をしながら、その人その人のことを考える。

そうして…。時折、気に入った客であれば、利益なんて考えず、仕入れ値で売っちゃったり、料金を取らなかったりもする。

そんな店も。
この私の住んでいるすぐ傍にあったことが何だか嬉しかった。

「一期一会」を大切にしたいと思った。

出来上がりは木曜日。とっても楽しみだ。












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