2008'10.21.Tue
level.45
今日。
出張で幼馴染みが、私が暮らす街にやってきますた。
本社がこっちにあるからとたま~にやって来ます。出張って何だよ?と問えば「会議だよ」と。何の会議だ。
何の仕事をしてるのか、サッパリ存じません。
何の業界かは知っているけど、それで何やってんの?ってな感じ。でもま、そんなもんだろ。
無茶苦茶なことばかりで沢山の人に怒られてばかりで…。
元々口は達者な方ではないし、色々言うのも面倒ってな、喋らずに済むなら喋りたくないってな、そんな性格なので、グッタリ疲労の色モロ出しの私の姿を見つけた彼は、ブンブンと元気一杯に手を振ってくれますた。
振り替えす気力もないってか、むしろこのまま素通りして家に帰って寝たい…そう本気で思うも、
「ジーサン、大変だったな」
そう言われたら、無視は出来ない。あれから約1週間、安定しているから心配するなと言われたまま、ジーサンの様子も、そして私の実家の人々の様子も全く分からなかったから。
「ねーちゃん、元気?」
「うん、あ、石鹸貰えって言われてた」
忘れないうちにと石鹸をその場で渡す。
「うちのかーさんととーさんは?」
「普通。オバサン、ちょっと疲れてるみたいだったけど、オヤッサンはいつもと同じ。囲碁の相手させられた。囲碁なんて知らないっつうの」
自分の家族のことなのに、こうして他の人から聞くのはちょっぴり寂しいけど、どうしても聞かずにはいられない。
近くのオッサン率100%の焼き鳥屋に入る。
カウンターに座る。
他愛ない話をする。
地元の。
あの空気、あの方言…。懐かしい見慣れたあの街にコイツがいるのは当たり前のことで、何の違和感もなく、極自然なのだけど、
この街にコイツがいるのは物凄い不自然なのだ。
当たり前に地元の方言で喋られるのが凄い気になるのだ。
「やっぱ肉の中では鳥が一番だよな!」
何でそんなことを大声で宣言する必要があるのか?
「オマエんちのカレーも鳥だよな。チキン一家だよな!」
人んちの食卓を常識みたいに把握しとくなよな。
「シーフードだよ」
ムカついたので嘘っぱちを言えば、
「え?いつの間に?」
何で驚く必要があるんだよ。
私は。
よその家のニオイがメチャメチャ苦手なので、あんまり人んちに遊びに行くと言うのが好きではありません。
その家族その家族の、何か決まりみたいなのがあるだろうし、粗相をしてはたまらんなと妙に落ち着かないから。
例えば…
家で出るカレーの肉はチキンが当たり前だと思ってたんですけど、この幼馴染みの家は牛です。
カレーのルーも全く違います。まぁ、うちの母は物凄い料理ベタで、コイツの母親は物凄い料理好きってか、物凄い凝るので…。
そーゆー。
いらない衝撃を受けてしまうことになる可能性が高い、人様の御宅訪問ってのが、子供の頃から本当に苦手。
でも反対にこの男は。
私よりも私の家にいる。
小学生の頃から近所に住んでいるし、人懐っこいコイツは一人っ子なので、よくうちに遊びに来ていた。両親共働きだったし。
「あ、おかえり~!ドラゴンボール、始まってんぞ!」
中学生の頃、夏のコンクールで部活動が毎晩遅かった。クタクタの腹ペコで帰ってリビングのドアを開けると、私の席でモリモリご飯食べながらドラゴンボールを見ていた。
中学に入って間もない頃は…
思春期もあって、学校で滅多に話をしない、会っても話もしない。そんな時期もあった。その頃は家にもめっきり来なくて、落ち着いて堂々と自分の席で食事が出来ていた。
なのに…
いつの間にかまた当たり前のようにコイツはいて、飯を食っていた。
男心は分かりません。
「席がないー!腹減ったー!!」
ムキー!と叫ぶ私に母親は、無理矢理隣に隙間を作って並んでご飯を食べさせた。
私は左利きだからいつもその隙間は、こいつの左側になり、そしていつも左横顔を見ることとなっていた。
別にその横顔について何も考えたことも思ったこともなかったのだけど、
高校を卒業してから家を出て、年に数回、実家に帰る位が当たり前となっている今の私には、
ヘタクソな箸でムッシャムッシャ食事をしているこの横顔がとても懐かしいと思うものとなっています。
たま~にこうして2人で並んで食事をすることになると至極自然にコイツは私の右側をそして私はこいつの左側の席に座る。
生まれた時から一緒に食事をしている姉とでも、たまに逆になってお互い箸が扱いづらくて途中で変わることもあるのに、
そういえば、コイツとは1度もそんなことがないなとどーでもいい事を思った。
「出張でオマエんとこ行くのを伝えようとオマエんちに帰り寄ったんやけどな、そん時初めてジーサンのことネーチャンから聞いて…。オマエが泣いたって言っとった」
どーでも良い情報まで流すな!「石鹸、返して」と手を出したがニヤニヤ笑うだけだ。
「ジーサンのことも大変やったろうけどな、そん位で泣くワケなかろーよ、オマエは」
別に…と言う私に横顔を向けたまま、
「もう無理せんで良いんやないん?」
凄くどきりとしますた。頑張るなって言われたらそうだね~と言うけど、
「誰だって無理しないと生きていけないんだよ」
カチンとくるようなムッとした言い方で言い返したけど、「そやな~」とノンビリ答えられただけ。
「オマエのその顔、最悪や。まぁ、こんなゴチャゴチャしたとこでセカセカ生きてりゃ、仕方ないやろうけど」
私の家族を、そしてその家族と居るときの私を知っている人に、この街で会うのが落ち着かないのは、
何とか1人で必死で体裁を保っている情けない姿を一発で見抜かれるからだ。
「あの街は嫌いなんか?実家は天国やわ」
「あんな、年頃過ぎた娘が実家に帰ってくるなんて、何かあったかと近所じゃ肩身が狭くなるんよ。もうクリスマス過ぎたケーキもイチゴ新鮮に変えても売れんのや!」
よく分からない例えを地元の方言で捲くし立てれば、
「そうやな~。売れんな。買わんな~」
「オマエもな!」
「男は40からや!」
「30代は何!?」
ノストラダムスの予言で。
当時はとっくに死んでいると思って覚悟までしていた歳を、もう随分と過ぎてしまった。
それなりに色んなこともあって、「人は無理をしないと生きていけない」なんて言い切ってしまう、そんな嫌な大人になってしまったけど、
こうして。
変わらない横顔が、変わらないノンビリ方言丸出しのこの声が、色々と沢山沢山無理をしている今の自分に、ジンワリと元気をくれた。
「ほらほら頑張れ!」とか「しっかりせな!」とかコイツは言ったことがない。
「んじゃらば、俺は帰ります。全く週初めから出張とかついちょらん~と思っちょったが、まぁ、良かったわ」
特急電車の入り口に立ってコイツは言った。私も同じ線の電車だ。特急か快速かってだけだ。
「いつでも帰って来いや。あ、近所には売れ残ることもあるんすよとフォローしとくけ~」
「フォローじゃないから、嫌がらせだから、ソレ」
明日も。
嫌なことばかりだと既に分かっているけど、無理を沢山しないといけないけど、
頑張れると思った。
最悪や。なんてもう言われないような顔で私はこの街で居たいから。そう思う。
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2008'10.19.Sun
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